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第1回 全国医師連盟 国会議員アンケート結果

2008年9月30日

【目的】

全国医師連盟(略称「全医連」)は、患者・医療従事者双方にとってよりよい医療の実現を目指して2008年6月8日に正式発足した医師の新組織である。ただ、よりよい医療・医療政策とは何か、全医連会員の中にも多様な意見があり、全医連も組織としての正解を手にしているわけではない。

全医連が本格的に活動を開始するにあたり、活動の方向性を検討する目的で、国民の代表であり立法府を構成する国会議員に、医療・医療政策に関する見解を求める調査を行うこととした。また、今後も医療をテーマとしたアンケートを継続して行うことで、国会議員とその支持者である国民、そして全医連との相互理解を図ることも目標とする。

2008年6月中旬に医学部定員増の方針が決定した一方で、医療費の議論が立ち遅れているという意見が全医連内では多い。今回の調査は、国会議員が医師数と医療費に関してどのように認識しているのかを明らかにすると同時に、医療費論議に関する国会議員からの有益な提起を得ることを目的とする。なお、調査は可能な限り多くの国会議員の意見を直接把握すること、および国会議員の意見を直接国民に届けることを意図して、記名式アンケートの手法を用いて実施し、記名式であり回答を公表する旨を依頼書に明記して行う。 

【調査方法】

対象:衆議院議員479名・参議院議員242名、計721名 (2008年4月23日に比例で繰り上げ当選された和田 隆志衆議院議員へのアンケートが欠落したことをお詫びいたします。)

方法:2008年7月14日に、5つの設問に参考資料を添付したアンケートを郵送した 。また、メールアドレスがある場合はE-mailでも同様のアンケートを送付し、回収した。回収方法はE-mail、Fax、同封した返信用封筒による郵送のいずれでも可とした。

解析:到着した94名の回答のうち、5問のいずれかに何らかの回答がなされた92名の回答を有効回答として解析を行った。グラフ作成においては、複数回答したものは重複を許さず(例:1人で記号3つ回答した場合、各項目0.33人でカウントする)集計した。グラフには、各回答実数/各党の回答総数と、 百分率結果を付記した。

【結果】

 

【設問1】 望ましいと考えられる人口あたりの医師数についてお聞かせください。⇒コメント集1
参考資料: WHO加盟国の医師数 (WHO) より抜粋

a.  -1.50/千人 (ボスニア・ヘルツェゴビナ、中国、サウジアラビア)
b.  1.50-1.75/千人 (韓国、クウェート)
c.  1.75-2.00/千人 (【日本現状:1.98/千人】、ドミニカ共和国、ベネズエラ)
d.  2.00-2.50/千人 (カナダ、オーストラリア、英国)
e.  2.50-3.50/千人 (米国、フランス、ドイツ、北朝鮮)
f.  3.50/千人- (ロシア、キューバ、ベルギー)

 現状よりも少なくすべきという意見は、皆無であった。「e.2.50-3.50/千人(米国、フランス、ドイツ、北朝鮮)」という回答が最も多く、全体の70%近くを占めた。2.50/千人の場合には医師の増員は6万2000人、3.50/千人の場合には18万2000人の増員が必要となる。

 

【設問2】 当面目標とする年間あたりの医師養成数についてお聞かせください。⇒コメント集2  
参考資料:医師数及び平均年齢,施設・業務の種別・性・年齢階級別(厚生労働省)より抜粋

a.   - 7,000人/年
b. 7,000- 7,500人/年
c. 7,500- 8,000人/年 【日本現状: 7,500-7,900人/年、2002-2008年度】
d. 8,000- 9,000人/年
e. 9,000-13,000人/年 【超党派議連* の目標: 12,000人/年】
f. 13,000人/年- 

 現状より少なくすべきという意見は、皆無であった。最も多い回答は、超党派議連* の目標12,000人に近似した「e.9,000-13,000人」という意見で、全体の60%以上を占めた。
* 超党派議連とは、「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」をさす。

 

【設問3】 社会保障費の自然増のうち、2200億円/年の削減を堅持すべきか否かお聞かせください。⇒コメント集3
参考資料:国民医療費,年次×年齢階級別(厚生労働省)より抜粋

a. 2200億円/年の削減を堅持すべき
b. 2200億円/年の削減は撤回すべき
c. その他

 与野党を問わず、「b. 2200億円/年の削減は撤回すべき」という回答が過半数を占め、全体では90%近くを占めた。ちなみに、報道によると、2008年7月25日、2009年度予算の概算要求基準(シーリング)において、社会保障費の自然増を2200億円抑制することで財務相と厚生労働相との間で合意がなされている。

【設問4】 来年度一般財源化予定の道路特定財源のうち、医療/福祉にどの程度回すべきとお考えかお聞かせください。⇒コメント集4
参考資料:国民医療費,年次×年齢階級別(厚生労働省)より抜粋

a. なし
b. 0.5兆円(5000億円)程度
c. 1兆円程度
d. 1.5兆円程度
e. 2兆円程度
f. 2.5兆円程度

 記号回答は分かれたが、その中でも最も多い回答は「c. 1兆円程度」であった。また、この設問においては、記号回答は選択せず、コメントのみの回答が多くみられた。

 

【設問5】 当面目標とする理想的な医療費総額(対GDP比)についてお考えをお聞かせください。⇒コメント集5
参考資料:WHO加盟国の医療費 (WHO)より抜粋

a.  - 6.0% (北朝鮮、韓国、中国、スイス)
b. 6.0- 7.0% (メキシコ、ルーマニア、アフガニスタン)
c. 7.0- 8.0% (【日本現状:7.9%】ブラジル、フィンランド、オーストリア)
d. 8.0- 9.0% (英国、イタリア、イスラエル)
e. 9.0- 10.0% (オーストラリア、カナダ、スウェーデン)
f. 10.0- 15.0% (ドイツ、フランス、スイス)
g. 15.0%- (米国)

現状以上の医療費(対GDP比)を当面の目標とする回答が多く見られた。最も多い回答は「f. 10.0-15.0%(ドイツ、フランス、スイス)」で35%近く、次いで「e. 9.0-10.0%(オーストラリア、カナダ、スウェーデン)」が30%近くであった。

 

【考察】

92名(締切後到着の6名を含む)の国会議員から回答が寄せられた。回答内容と回答者名の公開が明記されている記名式アンケートであること、そして全医連が発足より一ヶ月ほどの組織であることを考慮すると、事前の予想を大きく上回る数の回答を得たと考えている。また、記号回答に加えて、詳細なコメント記載が多数の回答でみられた。これらは、国会議員の、医療に対する真摯な取り組みを反映するものであると評価している。

今回の92名という回答者数は、医療に対して関心を持つ国会議員が相当数存在することを示すには十分であるが、中立かつ公平に全体の傾向を把握するには不十分であると考えられた。したがって、各設問への回答に対する考察を行うことは困難であると思われる。 回答をみる限り、医師数や医療費の増加に対して積極的な理解を示す国会議員が多かったという事実に触れるに留めておきたい。

我々は、医療従事者として、医師養成数の増加を裏付けるための医療費の増加を望むことはもちろんであるが、他の歳出とのバランスをとる必要性も、財源問題の難しさも理解でき、決して単純な問題でないと考えている。したがって、たとえ医師にとって厳しい意見であっても、回答が寄せられたこと自体が国会議員の関心の高さを示すものと受けとめている。感謝の意を表したい。

全医連は、今後も医療に関するアンケートとその結果の公表を、中立かつ公平な立場で継続する予定である。これらのアンケートが、国会議員にとっては、政策について自らの考えを示す適切な機会となり、国民にとっては、その考えを理解するための一助として活用されることを期待している。

今回のアンケートでは回答を得られなかった国会議員からも、次回以降、積極的な回答を切に希望する。

 

【まとめ】

1) 92名の国会議員から回答が寄せられ、詳細なコメント記載も多数の回答でみられた。これらは、国会議員の、医療問題への関心の高さを表すものと考えられる。

2) 回答を寄せた国会議員の中では、医療費/医師数のどちらも増やすことを提案する意見が多かった。

3)  全医連は、今後も医療に関する記名アンケートを継続して行い、中立かつ公平な立場で結果を公表する予定である。このアンケートを通じて、国会議員と国民の相互理解が得られることを期待している。

 


記号回答の他に多くのコメントが寄せられました。当連盟会員より、特に傾聴すべきものとして支持されたご意見を抜粋して掲載いたします。敬称は略させていただきます。なお、ご回答いただきましたすべての国会議員の皆さまのコメント回答は、当連盟ホームページ上(設問1設問2設問3設問4設問5)でご覧いただくことができます。

設問1

篠原 孝 (民主党)  どうして人口比のみにするのか。医師へのアクセス時間も考えるべき(例えば、地方は人口が少なく、医師にかかるのが大変)。面積または距離の平均も必要。さもないと都市部の解決にしかならない。食べ物については、フードマイレージ(重量×輸送距離)を作り指標としている。医師の場合、距離×人数の合計で積算してみて比較すべき。

小池 晃 (共産党)  「望ましい医師数」という設問であれば、できるだけ多くという選択肢になります。もちろんその場合には、日本の国民医療費の水準を大幅に引き上げることと合わせておこなうことが必要です。

設問2

自見 庄三郎 (国民新党)  臨床研修医制度、医科系学部の定員増など医師養成教育の抜本的改革が必要だ。医師増が実現するまで10年かかる。今すぐ改正に着手すべし。

設問3

広津 素子 ( 自民党 )  初めに目標削減高の数字があるのは、おかしいし、合理的でない。必要な医療は、できるだけ低いコストで行うべきであるし、必要ない医療は、行ってはならないのであるから、目標削減高以外の方法で、医療費の適正化を行うべきである。なお、人口や高齢者が増えると、医療・介護費用は、増えるのが、当然である。

清水 鴻一郎 ( 自民党 )  撤回するのみならず、緊急対策として新たな財源を確保すべきである。

三日月 大造 ( 民主党 )  わが国の社会保障制度は、「先進国」として不自然、相応しくない状態に抑制され続けてきました。その抑制された少ない枠内で、保健・医療・福祉(介護)が汲々とコストシフティングを繰り返してきたのがこの間の「制度改革」の実情です。先進国水準への社会保障費の適正化こそが「社会保障制度改革」であり、国民にとっては無意味な「骨太の方針2006」閣議決定の廃止はまずその第一歩といえるでしょう。小泉長期政権のツケを負うかのような安倍・福田両政権ですが、最大のツケを払い続けさせられているのは国民であることを忘れてはなりません。

設問4

金田 誠一 (民主党)  国内総生産に対する公共事業と社会保障への国庫支出額はアメリカ・フランス・ドイツ・イギリスなどでは社会保障費が公共事業費の2倍から10倍となっている。
 これに反して、日本は逆に社会保障費が公共事業費の約半分となっている。このことからも、いかに社会保障費が低く抑えられていることが分かる。必要なところに必要な予算を付けることは当然である。

広津 素子 (自民党)  道路特定財源が、環境税として一般財源化されても、真に必要な道路は作らなければならないし、環境技術の開発や推進、新交通システムのためのインフラ整備も必要である。
 そのため、公務員改革とも連動した独立行政法人・公益法人の整理等で、どの程度の歳出節約ができるかにかかっているが、状況を見ながら、なるべく多くの支出を医療・介護などの福祉に回したいのは、やまやまである。

三井 辨雄 (民主党)  医療に携わる者の一人として、より多くの財源を医療福祉に投入してほしいという思いですが、社会保障と同様に教育分野にも等しく配分されるべきと思いますので、金額は決めていません。

設問5

片山 さつき ( 自民党 )  “医療”には産業としても科学技術としても大きな可能性があり“医療”の概念はどんどん拡げ伸ばし人類の幸福に貢献すべき。その上で公的医療でどこまで見るべきか、ありうべき案を示して国民が納得できるような透明で中間搾取のない受益と負担のあり方を確立すべき。

自見 庄三郎 ( 国民新党 )  OECD先進国なみの9%への引き上げは私および国民新党の公約だ。これを達成したあと、仏、独なみの10%すなわち、総医療費を50兆円まで増やすべきだ。高齢化時代の高福祉には必要な額だ。

塩崎 恭久 ( 自民党 )  名実共に国民が安心できる持続可能な医療の再構築に必要な医療費を確保。

仙谷 由人 ( 民主党 )  GDP比10%程度は許容されるのではと考えています

鳩山 由紀夫 (民主党)  日本の対GDP医療費は他の先進諸国に比べ少ないと認識している。医師不足や病院閉鎖にみられる医療崩壊を食い止め、医療提供体制を整備するため集中的な財政投入が必要であると考えるが、対GDPの目標値は設定していない。

森田 高 ( 無所属 )  まずは、1%純増。中期的に2015年10%、2025年12%〜13%必要

三日月 大造 ( 民主党 )  現在の医療費増加は、過去のインフレや医療機器・薬剤費増大と異なり、高齢化による自然増が主要因。その状態で医療費抑制のみを追求すれば、低コスト医療の純化もしくは、保険から自己負担、医療から介護といった単純なコストシフティング(付け替え)に向かうしかありません。医療費抑制・患者負担拡大が重ねられた結果、日本の医療費の対GDP比は2004年に主要先進国(G7)で最下位に転落、逆に患者負担割合は最高という状態。その帰結として2006年改正を前後し、地域医療と医療保険の崩壊として医療需給の両面から眼に見える形となって噴出してきたのでしょう。
このような状況での当面の「医療費適正化」はイギリス・ブレア政権に習いヨーロッパ諸国平均値の対 GDP 比 9%までの引き上げがひとつのポイントになるのではないかと思っています。
医療サービスでは「コストとアクセスと医療の質」のうち2つについては両立できるが3つの両立はありえないとされます。日本では前2者の維持に「医療の質」、特にモノ(高額医療機器・薬剤・建物等)はまだしもヒト(配置基準・育成等)が犠牲にされてきました。医療改革ではニーズにかなった「質」とリーズナブルな「価格」の困難な両立以外に国民合意は得られない。イギリス同様、医療の質から「あるべき21世紀の日本の医療」の追求に着手すべきです。奇しくも 2007 年は主要産業別の就業者人口で「医療福祉産業 591 万人」が「建設業 577 万人」を初めて逆転した年でした。この未来型産業分野を健全に育成していくことはきわめて重要です。国民常識と乖離した道路計画などに象徴される発展途上国型の「土建国家」から、国民合意で先進国型の「保健・医療・福祉国家」への転換を是が非でも急がなくてはなりません。


【図1】 医師数・医療費に対する考え(議員別)

■ 下記の図は、設問1と設問5に対する回答から作成した。円の大きさは回答者数を表す。
■ 設問1と設問5に対する回答を、各選択肢内の数値の中央値で置き換えてプロットした。

各議員の氏名は、設問3に対する回答にしたがって色分けされている。赤字:設問3で、a.2200億円/の削減を堅持すべきと回答した議員、青字:b.撤回すべきと回答した議員、緑字:c.その他と回答した議員。

■ 下記に20人以上の群にプロットされた議員名を記す。

■ 上記の図は、設問1と設問5各々1個の記号回答がなされた場合にのみプロットすることができるため、そのカテゴリー外の回答の議員は含まれていない。以下に、プロットされていない議員の回答を、補足として (党) 議員名[設問1の回答、設問5の回答] の形式で記載する。なお、[その他]は、記号回答がなくコメント記載があったものを指す。

(自) 飯島夕雁 [d,e,f、d,e]
(自) 臼井日出男 [その他、e]
(自) 塩崎恭久 [その他、その他]
(民) 大河原雅子 [その他、その他]
(民) 岡本充功 [d,e、その他]
(民) 尾立源幸 [e、その他]
(民) 下田敦子 [e、その他]
(民) 仙谷由人 [e、その他]
(民) 田島一成 [その他、d]
(民) 鳩山由紀夫 [e、その他]
(民) 菊田真紀子 [e、無回答]
 
(民) 舟山康江 [e、その他]
(民) 松本龍 [e、その他]
(民) 三日月大造 [その他、d]
(民) 水戸将史 [e、無回答]
(民) 蓮舫 [その他、その他]
(共) 井上哲士 [e、その他]
(共) 紙智子 [e、その他]
(共) 塩川鉄也 [e、無回答]
(共) 高橋千鶴子 [e,f、f]
(共) 吉井英勝 [その他、その他]
 

【図2】 医師数・医療費に対する考え(政党別)

■ 下記の図は設問1と設問5に対する回答から作成した。それぞれの円の中心は議員が所属する政党毎の平均値を表し、円から伸びる直線は標準偏差を表す。ただし、標準偏差はマイナス方向のみ表示している。
■ 全回答者の平均値と標準偏差の範囲をグレーの背景で示す。
■ 回答の平均値は、各選択肢の中央値を用いて計算した。複数回答の場合もその回答の中央値を用いた。
■ その他の回答の場合、コメントよりおおよその数値を推定しそれを適用した(例:「OECD並み」とコメントにあった場合にはOECD30カ国の平均値)。設問1で3名(自民党1、民主党2)、設問5で11名(自民党1、民主党8、共産党2)の回答は、数値を推定する事が不可能であったため、計算には用いなかった。
■ この図はあくまで回答に基づくものであり、政党別の回答率がさまざまであることから、政党所属の議員全体の平均値と標準偏差を示すものではないことを付記しておく。

2008年9月30日全国医師連盟